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人は見た目で (2/3) ≪ファミリー≫ 千葉県 高校2年 ユーリ 2011.3.03

その後、彼は家の中に招き入れられたものの、
ソファーに座ると黙ったままでした。

その空気にしびれを切らしたのか
母は彼に向かって

「きみは誰?今日は何しにここに来たの?」

と聞きました。

それには私もビックリしたし、彼も
ビックリしたようでした。

「俺ですか?俺は呼ばれたから来ただけで、
 別に用があって来たわけじゃないんで…」

と答えたカレシ。

その答えに母はため息をつきながら、

「あらそうなのね。一番残念な答えだわ。
 私の用は済んだから今日はもう帰っていいわ。
 それからユリ。お母さんね、あんたの言うとおり外見だけじゃなくて、
 彼の中身もちゃんと見たから。あとでゆっくり話をしましょう」

すると今度は彼の方から母に向かって

「まだ何も話をしてないのに、俺の何がわかったんですか?」

と聞きました。

「頭が悪い子だってことよ。
 それに自分の半径1メートルしか見えてない子かな」

その言葉にムッとしながら「どうしてそんなことが分かるんですか」と反論した彼。

「知りたい?なら、二人の後学のために教えてあげるわ」

と言って母は私たち二人に向かって言いました。

「今日君を家に呼んだのはね、私に対して
"娘さんと真面目に付き合ってます"みたいな仁義を切る機会をあげようと
 思って呼んだのよ。そうすれば、ユリだってコソコソ親に隠れて君と付き合わなくて
 済むでしょ。でも君は何?うちに来て自分の名前すら名乗らない。
 母親である私に対してユリとの付き合いの話をするどころか、
 「俺の方には別に用はないです」って言ったわよね。
 それ聞いて正直あきれたわ。

 付き合っている相手の親に家に呼ばれたら、普通「どうして呼ばれたのか」
 考えるものでしょ。考えれば簡単に想像つくわ。でも君はそれができなかったの。
 だから"頭が悪い子"って思ったの。

 それに何なのその頭とそのズボンの履き方は?個性?自己主張?
 そんな髪の毛とかズボンの履き方で自己主張するのが男のすること?

 そんな薄っぺらい自己主張をする前に、相手の親に好感を持ってもらうために
 ちょっとは格好に気を使うべきでしょ。君はね、それすらもできなかったの。
 相手の立場に立ってものごとを考えることができないのよ。
 それで"自分の半径1メートルしか見えてないだなぁ"って思ったの。
 わたし間違ってるかしら?」

(終わった…。カレシを家に連れてこなければ良かった…)

そう思う反面、母の言葉も的を得ていたので、私は複雑な思いでした。

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