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父親失格(3/3) 育児・教育 東京 会社員 S.Yamashiro 2009.08.25

私が病院に着いた時、
娘の心臓は既に止まっていました。

正確には、死後一時間以上も経っていました。

「あなたは何をしてたの?
 今まで何をやっていたの!?」

ポロシャツ姿で病室にやってきた私に、妻が最初に言った言葉でした。

『何を考えているんだ、今すぐ病院に行きなさい。あんた父親だろ!』

ゴルフ場での、あの社長の声以上に胸に突き刺さった言葉でした。

両肩に重たいものが圧し掛かったまま通夜と葬式が終わり、
自宅に向かう車の中でのことでした。

「49日が済んだら、離婚しましょう」

と妻に言われました。

自分で招いた当然の結果。

私は黙って頷くしかありませんでした。

そしてお葬式から一週間ほど経った週末のこと。

私の家に小学校の先生がやってきました。

まゆみが描いた絵が小学校に残っていて、それを届けに来てくれたのです。

家族3人がニコニコ笑っている絵。

まゆみが一年生の時に描いたもので、
退院してまた学校に登校した時に返す予定だったのだそうです。

「画用紙に好きな言葉を書いてもらって、裏にその言葉を絵で表してもらったんです」

そう先生が教えてくれました。

絵の裏を見ると、そこにはまゆみの字で

○すきなことば: えがお
パパはいつも「まゆみのえがおを見るとつかれがふっとぶよ」といいます。
だから、えがお。
パパとママがよろこぶなら、いつもえがおでいようとおもいます。

あの日、私が最後に見たまゆみの顔は笑顔でした。

「ムリしないでいいよ。でも来週行けたらまゆみ嬉しいな」

私はあふれ出る涙を止めることができませんでした。

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