文字を小さく文字を大きく
 
まだまだ未熟者 家 族 神奈川県 新米教師 Y.S. 2009.07.22

私が勤める小学校に、
警察から電話が入りました。

公園でうちの生徒が他校の生徒とケンカしいてたところを補導したという連絡。

4年生の学年主任が電話に出て、生徒の担任である私が呼び出されました。

補導されたA君は、普段はどちらかと言えば大人しい生徒だったので、名前を聞いた時は「えっ?」と思いました。

教員になって2年目で初めて経験する派出所へのお迎え。

内心少しドキドキしていました。

派出所に着くと、中で下を向いたままジッと椅子に座っているA君の姿が見えました。

『○○小学校の者ですが…』

派出所の前で立っていた体格のいい年配の警察官に話掛けると、

『ずいぶん遅かったですねぇ。他の学校の生徒はもう帰りましたよ』

と少し皮肉交じりな言葉が返ってきました。

A君は、多分私に気づいているのでしょうが、下を向いたままでした。

『すみません、うちの生徒が大変ご迷惑をかけました』

まずは謝罪の言葉を口にすると、警察官は何やら書類を出して書きものを始めました。

『あのー』

再度声を掛けると、それに気づいたように

『よろしいんですか?早速私と話を始めますか?』

と聞かれ、その言葉の意味が分からないまま、

『はいっお願いします』

と答えました。

『ケンカ相手の子どもたちとは塾が同じらしくて、
親のことで口論になって、それで彼は相手に掴みかかったらしいんですよ。
一人で5人相手に向かってくなんてなかなか勇気ある子ですね。
しかし、ケンカ両成敗だから、全員にキツくお灸据えときましたけど』

警察官は簡単にコトの経緯を話してくれました。

『相手の生徒にケガがなかったんでしょうか?』

私がそう質問すると、警察官は少し驚いたように、

『相手の生徒の方ですか?』

と聞き返されました。

『えぇ、相手にケガさせてしまってコトが大きくなってしまったら、
親御さんも大変ですし、学校側の監督責任も問われますので…』

そう言い終わらないうちに

『あなた本当にこの子の先生なんですか?』

と突然大きな声を出されました。

『さっきからおかしいですよね?
なんで私と話す前に自分の生徒と話そうとしないんですか?
どうして自分の生徒よりも相手の生徒のケガを先に心配するんですか!?
親御さん?学校の監督責任?
そんなことより彼のこと心配するのが先じゃないんですか?』

突然の警察官の剣幕に驚いてしまいました。

『ケンカの原因は、彼のお母さんのことですよ。
夜の商売をしていることをバカにされたらしくて、
もちろん相手は冗談で言ったつもりだったらしいんですけど、
彼にとっては冗談でも許せないことだったんですよ…』

それから20分ほど、みっちりその警察官にお説教される羽目になりました。

帰り道、A君にどう話しかけようか考えていると、

『先生ごめんね、僕のせいで…』

と先に謝られてしまいました。

私は素直に、

『怒られたのは先生がまだまだ未熟者だから。
もっとしっかりしないといけないわね』

と言うと、

『大丈夫。ぼく、偉そうな先生より、先生みたいな先生の方が好きだよ』

と励まされてしまいました。


----------------------------------------------------------
イメージ写真、文中の下線、カラー等の装飾、並びに関連サイトへのリンクは、
Simple-HP側にて設定させていただいております。
コラムに対するコメントもお待ちしております。 一つの『コラム』として選考・掲載
致します。---《コラム/コメントの投稿》
  • 前頁に戻る