文字を小さく文字を大きく
 
もう一人のお母さん(2/4) ほのぼの 千 葉 高 二 ビターチョコ 2012.5.21

ある日学校から帰宅し、いつものように「ただいま」を言いに診察室に行くと、中から

「産みの苦しみなんて一瞬よ。育てる方がずっと大変なんだから」

という年配の女性のお客さんの声が聞こえてきました。

「でもあの子たちにとって本当の母親は姉ですし、姉のことを忘れて欲しくないんです」

と叔母の声。

いつもの明るい声ではなく、診察室のドアをノックするのをためらってしまったほど真面目な声。

「それに今までずっと"叔母さん"って呼ばせてきましたから今更"お母さん"なんてムリですよ」

声のトーンはすぐにいつもの明るい声に戻りましたが、その言葉にはさみしさもあるような気がしました。

「育ての親も立派な親よ。あなたはいいお母さんだと思うけどねぇ」

お客さんの言葉がそのあとに続きましたが、それきり二人の会話はなくなり、私はそっと診察室の前を離れたのでした。

○ 連載「二人のお母さん」 --- [1] | [2] | [3] | [4]

○ 「ホノボノ一覧」に<戻る>

-------------------------------------------------------
イメージ写真、文中の下線、カラー等の装飾、並びに関連サイトへのリンクは、
Simple-HP側にて設定させていただいております。
掲載されたエピソード・コラムの著作権は全てsimple-hp.comに帰属します。
リンクは大歓迎ですが、転載はご遠慮ください。
皆様のご家族のエピーソードのほか、既に掲載されたエピソードに関するコメントやメッセージもお待ちしております。---ほのぼのエピソードの投稿
  • 前頁に戻る