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軽トラックとみかん ≪ちょっと涙≫ 愛 媛 主 婦 むらさき 2011.12.15

両親の反対を振り切って結婚したのは4年前のこと。

相手は働かなくとも家賃収入だけで食べていける、ちょっとした資産家の一人息子で、私はそんなところばかりに惹かれていたのかもしれません。

でも両親の言うとおり、長続きはしませんでした。

こどもが出来て、一緒に子育てできると思っていたのですが、ある日

「俺は子どもが嫌いなんだよ!」

と言われたのが決定的でした。

結局私は夫と離婚し、子どもを連れて実家に帰ることにしました。

久しぶりに実家の駅に着くと、
父が軽トラックで迎えに来てくれていました。

「だから言っただろ」

そう言われると覚悟していましたが、父は私に何も言いませんでした。

父と3歳の息子と私の3人で
並んで座るとちょっと窮屈(きゅうくつ)な軽トラック。

でもその窮屈さが妙に懐かしくて、私は昔のことを思い出しました。

子どもの頃は私が真ん中の席に座り、運転する父が
「みかん食うか?」と差し出すみかんを受け取って食べて。

暮らしは貧しかったけれど、親子三人いつも一緒でしたし
…楽しかった。

そんなことを考えていると、父が真ん中に座る息子に

「みかん食うか?」

とどこからか取り出したみかんを一つ差し出したのです。

あの頃と同じ声。

どうしてだか理由は分かりませんが、その声で涙があふれてしまい
それを隠そうとずっと窓の外を見ていました。

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