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ラベンダー翡翠 (4/6) ≪ちょっと泣ける≫ 東京都 会社員 清水佳織 2010.04.16

すぐにその女性が娘さんだと分かりました。

固まったまま動かない叔母。

シーンと静まった空気。

その空気がイヤで、
私は仕方なく

「どうして出来あがっているのに、まだ未完成なんですか?」

などと どうでもいい質問をしました。

すると娘さんは、

「この絵のモデルになっている女性は…私の母なんです。
 でも逢ったことがないので…だからいつまでも未完成のままなんです」

と答えてくれました。

太っているのか、痩せているのか、
肌の色は白いのか、それとも褐色なのか、
分からないまま想像だけで描いてきたのだそうです。

「写真も何も残ってなくて、あるのはこの翡翠のペンダントだけ。
 母が昔使っていたもので、私に残してくれた唯一のものなんです」

そう言って、娘さんは首から下げていた翡翠のペンダントを私たちに見せてくれました。

ラベンダー色のとてもきれいな翡翠。

叔母の方を見ると、
叔母は下を向いてハンカチで口を押さえていました。

「叔母さんいいの? このままでいいの?」

たまらなくなった私は、叔母にそう話掛けました。

すると、その場にしゃがみこんでしまった叔母。

その空気で察したのでしょう。

「もしかして、お母さん…お母さんなの?」

叔母に向かって娘さんがそう話しかけました。

その言葉を否定するかのように
最初は下を向いたまま首を横に振り続けた叔母でしたが、
最後には、力ない声で「ごめんねなさい」と呟きました。

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