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ラベンダー翡翠 (3/6) ≪ちょっと泣ける≫ 東京都 会社員 清水佳織 2010.04.14

そして土曜日。
娘さんが個展を開いているギャラリーに
叔母と一緒に出かけました。

「前回でだいぶ感情を消化できたから、
 今日は大丈夫だと思う」

家を出た時はそんな風に言っていた叔母でしたが、原宿が近づくにつれ、やはり口数が少なくなっていきました。

ギャラリーに着き、叔母が中をそっと覗くと、受付には幸い(?)にも娘さんではない人が座っていました。

「佳織、作品を見たらさっさと帰るからね。
 話しかけられても余計なことは絶対に言わないで」

「分かったけど…、でも、それでいいの?」

「いいの。娘の人生を今更かき回したくはないから」

そんな約束をさせられた後、
私たちは受付簿に名前を書き、画廊の中へと入って行きました。

壁に並ぶ、色使いの鮮やかな油絵。

麦わら帽子を被った真っ黒な少年が魚を抱えている絵、
太陽の下で子どもたちが川遊びをしている絵がそこに飾られていました。

それらの作品を見た叔母は、

ひと言「良かった」とつぶやきました。

「何が良かったの?」と尋ねると

「私に絵の才能なんてないけど、
 でも作品から伝わってくる明るさから、娘が幸せだって分かるから」

と話してくれました。

横顔から、叔母がまた目を潤ませているのが分かりました。

ギャラリーの奥へと足を進めると、
白い空間に これまでの作品とは全く雰囲気の違うかなり画額の大きい絵が
壁の中央に飾られていました。

「ラベンダー翡翠(ひすい)」という作品名の油絵。

ラベンダー色の翡翠のペンダントを付けた女性の胸元が
そこには描かれていました。

私たちはその絵に惹き寄せられ、
二人でしばらくその絵に見入っていると、

「その絵は、中学生の時に一度描いて、
 その後も、高校の時、大学の時に何度も上から描き直して
 それで造りあげた作品なんです。まだ未完成なんですけどね」

と絵の説明をしながら一人の女性が私たちに近寄って来ました。

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