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受験結果発表と父の声 ≪ほのぼの≫ 東京都 会社員 龍之介 2010.03.16

この時期になると、
あの日の夜のことを思い出します。

第一志望の大学から
「不合格通知」が届いた日の夜のこと。

普段は仲の良い父と母が、一階の居間で何やら言い合いをしている声が聞こえてきたのです。

「俺のことかな?」

直感的にそう感じた私は、そーっと階段をおりてドアのそばで聞き耳を立てました。

「龍は?もう寝たんか?」

父の声が聞こえてきました。

どうやら父はお酒を飲んで帰ってきたようで、すごく不機嫌な声でした。

父が私に直接とやかく言うのなら構いません。

でも、私のせいで母がとばっちりを受けるのだけは嫌でした。

二人の会話が聞こえてきました。

母:「頑張って落ちたんだから仕方ないじゃない」

父:「は?あいつはそんなこと言ってるのか」

母:「言ってないわよ。でも夜遅くまで頑張ってたの知ってるでしょ。
    不合格の結果だけであの子の努力を否定しちゃかわいそうよ」

父:「ちがうだろ、頑張りが足りないから落ちたんだろ!」

私のことを理解してくれる母。

に対して、私の努力なんて一切認めようともしない父。

父が嫌いになった瞬間でした。

でも、父の次の言葉を聞いて、私の中の不快感はあっという間に氷塊したのです。

「龍の実力はな、あんなもんじゃないんだよ。
 龍が本当に頑張ったんなら、落ちるわけないんだって!」

本人の私以上に悔しがっていた父。

申し訳ない思いでいっぱいになりました。

次の日、私は父に「ごめん」と頭を下げて謝ったのを覚えてます。

そして翌年、もう一度第一志望の大学を受験し、
今度は見事合格することができました。

結果報告の最初の電話は、父にしました。

「今度は頑張ったから」

そう言うと意味が伝わったようで

「そうか、良かった」と父の喜ぶ声が聞こえてきました。

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