ただ声が聞きたくて
ただ声が聞きたくて | ほのぼの | 群馬県 大学4年 ゆかりん | 2008.03.05 |
今からちょうど4年前の話です。
群馬の大学に決まった私は、入学の2週間前くらいに神奈川から引越し、1人暮らしを始めました。
今まで炊事やお洗濯は、母の手伝い程度でしかしたことがなかったので、毎日失敗の繰り返しでした。
けど、何もかも私にとっては新鮮で、楽しかったのを覚えています。
神奈川の実家からは、週に2,3度は電話がありました。
きっと私のことを心配してくれてたんだと思います。
― ご飯はきちんと食べてるの?
― 困っていることはない?
― 学校はどう?
― 友達はできた?
母と話した後、父に代わり、高1の弟とも話す。
最初は普通に話していました。
しかし、それがだんだん面倒になり、ある日
「用がないなら電話してこないで」と言ってしまいました。
電話の向こうで、母はしばらく黙り込み、そして
― 分かったわ。ただ あなたの声が聞きたかっただけだから。
と言って電話は切れました。
そして数ヶ月が過ぎました。
私はサークルで出会った先輩と付き合うようになり、お互いのアパートを行き来する生活をしていました。
ある日、彼の部屋にいた時に、彼の携帯が鳴りました。
話し声から、彼の実家からの電話だと分かりました。
「ナニ? アー、アー、大丈夫だよ。そんなことより、こっちは忙しいんだから、用がないなら電話してくんなよ。そう、金だけ送ってくれりゃいいから。」
彼はそう言って乱暴に電話切りました。
「ったく、ウザいんだよねぇ。
あっちは俺の声を聞きたくても、こっちは聞きたくないっつーの」
と苦笑いする彼。
でも、私は笑えませんでした。 ・・・自分も同じことをしてる。
私は、「大切な用事を思い出した」と彼に言い、部屋を出ました。
そして、携帯からすぐに神奈川の実家に電話を掛けました。
― お母さん。
― ゆか?珍しいわね。どうしたの?
久しぶりに聞く母の声でした。その声を聞いただけで、私はウルウルしてしまいました。
― ゆか、どうしたの?何かあったの?
電話口ですすり泣く私の声を聞いて、母は心配したようです。
― 今どこにいるの?母さん、今からそっち行くから。
こんな優しい母に、私はなんてこと言ってしまったんでしょう。
私は一呼吸して、
― 違うの、私が間違ってたの。ただ、声が聞きたくて電話したの。
と伝えました。
今振り返っても、あの時ちゃんと謝ることが出来て、良かったと思います。
まもなく大学も卒業です。
実家に帰ったら、4年間も長い間、1人暮らしさせてくれ、いろんなことを学ぶ機会をくれた両親には、「ありがとう」って伝えたいです。
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