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良いウソ 《ジーンとくる》 東京都 大学二年 くれないさくら 2008.1.17

カフェで友達待っていた時のこと。

真向かいの席に、小学生低学年くらい男の子がお父さんと一緒に座りました。

聞こえてくる二人の会話から、
どうやら入院しているママをお見舞いした帰りらしいことがわかりました。

「ママまた痩(や)せちゃったね。」

盗み聞きは良くないと思いつつも、二人の声が聞こえてきます。

「そうだね・・・。なぁカズキぃ」

お父さんは、少し考えてから男の子に話しかけました。

「ママなぁ、また大きな手術をしなくちゃいけなくなっちゃったんだ。
だから・・・、今度お見舞いする時は、ママを元気づけるようなことを言おうか」

「元気づけるようなことってどういうこと?」

「例えばー、"今日は顔色がいいねぇ"とか、"この間より元気みたい"とか。
"また痩せちゃったね"って言われると、ママはきっと悲しくなっちゃうと思うんだよ」

ここから近い病院と言えば、癌(がん)を専門としている病院。

いけないと思いつつも勝手に変なことを想像してしまいます。

「ウソでも?」

男の子の声が聞こえてきます。

もう手に持っていた本は、読んでいるフリをする為の道具で、
私は二人の会話に完全に耳を傾けていました。

「ウソにはね、”良いウソ”と”悪いウソ”の二つあるんだよ。
相手を幸せにする”良いウソ”は、神様も許してくれるんだよ。」

「ふーん」

二人に飲み物が運ばれてきました。
ウェイトレスのお姉さんが席を離れると、また男の子の声が聞こえてきました。

「ねぇ、ママはいつおうちに帰ってくるの?」

「もうすぐ。手術が終わったら、すぐに帰ってくるよ」

しばらく沈黙の後、また男の子が父親に言いました。

「パパの"もうすぐ"っていうのも"良いウソ"?」

目頭が熱くなり、私には耐えられなくて、席を立ちました。

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